「柔道整復師だけで十分? それとも鍼灸師も取るべき?」——学生や若手の柔整師なら、一度は考える問いだと思います。
僕自身、柔道整復師として働くなかで「内科系の症状に悩む患者様は多いのに、柔道整復師だけではアプローチが乏しい」と感じたことがきっかけで、鍼灸師の資格も取りました。この記事では、実際に両方の免許を持つ立場から、ダブルライセンスのメリット・デメリットと、取得のリアルな数字を、煽らず正直にお伝えします。
この記事は国試の完全ガイド(※ピラー記事)の進路クラスターの記事です。柔道整復師の就職先の選び方とあわせてどうぞ。
そもそも:柔整と鍼灸のダブルライセンスとは?
柔道整復師
骨折・脱臼・打撲・捻挫といった「外傷」の施術が専門。開業時に健康保険(療養費)が使いやすく(鍼灸のはり・きゅう療養費は医師の同意書が必ず必要なため、柔整に比べると保険請求のハードルはやや高めです)、また接骨院は開業数が多く、職種としての一般周知が進んでいます。
鍼灸師
正式には「はり師」「きゅう師」という2つの国家資格の通称です。鍼・お灸を用いて、疼痛コントロールから内科系の不定愁訴まで、柔整よりも幅広い症状にアプローチできます。
たとえば、腰の痛みが強い急性期は柔整で施術し、痛みが落ち着いた慢性期は鍼灸でケアする——そんな使い分けを、患者様一人に対して自分だけで完結できるのがダブルライセンスの強みです。
要するに:柔整は「外傷のプロ」、鍼灸は「全身を診る東洋医学のプロ」。両方持つと、対応できる症状の幅がぐっと広がります。
取得の全体像:年数・費用・両立のリアル(比較表)
| 観点 | 柔整のみ | 柔整+鍼灸(ダブル) |
|---|---|---|
| できること・業務の幅 | 外傷や運動器疾患のみ | 内科疾患や不定愁訴にも鍼灸でアプローチ可能 |
| 診られる患者・症状 | 運動器に対する症状 | 疼痛コントロールや内科疾患、不定愁訴の症状 |
| キャリア・働き方の選択肢 | 整骨院・接骨院/整形外科等/介護・スポーツ現場/開業(整骨院) | 柔道整復師のキャリアに加え、鍼灸院の開業や、東洋医学を組み合わせた施術、美容分野にも強い |
| 取得の負担(目安:年数・費用・両立)※1 | 3年・400万円台が目安※2 | 6年・800万円台が目安※2 |
| 向いている人 | 外傷や運動器疾患のみに興味がある人 | 幅広い患者様に対応したい人 |
※1 年数・費用はいずれも目安(メガネ先生の体感に基づく)です。学校や地域、柔整免許保有者向けの科目免除の有無によって幅があります。
※2 職業訓練給付金や、学校によっては資格取得者への授業料減免がある場合もあります。
両方持つメリット
接骨院に来た患者様に、症状によって鍼灸を提案できる。逆に、鍼灸で来た方に柔整のアプローチを提案できることもあります。「柔整だけ・鍼灸だけではできないこと」があり、それぞれの強みを活かして、患者様の状態に応じてどちらも提案できるのが最大のメリットです。

デメリット・大変だったこと
一番大変なのは、仕事と勉強の両立です。「自分のため、患者様のために勉強する」という覚悟が必要になります。
〔重要〕免許を取れば終わりではない
柔整も鍼灸も、免許を取った後こそ勉強が必要です。常に自分をアップデートする気持ちがないと、免許があっても患者様の治療がうまく進みません。「W資格=安泰」ではないことは、はっきり伝えておきたいポイントです。
学生が誤解しがちな点
「(鍼灸も)あった方がいいですか?」とよく聞かれますが、これは人それぞれです。鍼灸や柔整を使って自分が何をしたいか次第だと思います。
取得の順番でいうと、おすすめは先に柔道整復師です。鍼灸は西洋医学と東洋医学の両方を学ぶ必要があり、頭の切り替えが必要で少し難易度が上がります。先に柔整で西洋医学を理解してから東洋医学を学んだ方が、習熟度が上がりやすいと感じています。
どんな人に向く/急いで取らなくていいのは?
柔道整復師が鍼灸師を取りたいなら
「幅広い疾患に対応したい」と考えるなら、取る価値があります。
鍼灸師が柔道整復師を取りたいなら
外傷の保険を取り扱いたい、鍼灸以外のアプローチも行いたい——などが目的であれば、価値があります。
いずれも、そこに必要性を感じていないなら、急いで取る必要はありません。
先輩からのひとこと
働きながらの学校は大変ですが、やりがいがあります。ぜひ自分を高めてほしいです。
判断に迷ったら
「なんとなく」ではなく、自分が本当に必要と感じているかが大切です。なんとなく取ろう、人に言われたから取ろう、では、しんどい時に踏ん張れなくなってしまうかもしれません。
監修:セジュツノワ編集部(柔道整復師・柔道整復師専科教員)/執筆:メガネ先生(柔道整復師・鍼灸師)

