もう一度、国家試験に挑む。その決断をした時点で、あなたはすでに一歩を踏み出しています。
ただ、既卒での受験は在学中とは条件がまるごと違います。同じやり方を続けても、同じ結果になりかねません。必要なのは根性論ではなく、計画の立て直しです。この記事では、何から手をつけるべきかを3つのステップで整理します。
この記事は国試の完全ガイド(※ピラー記事)の学習法シリーズです。
そもそも:既卒受験は「何が」違うのか
まず、現実を正確に把握しておきましょう。合格率には、はっきりとした差があります。
- 新卒:例年おおむね80〜90%前後で推移する年が多い
- 既卒:10〜30%台にとどまる年が多い
この数字を見て落ち込む必要はありません。大事なのは「なぜ差がつくのか」を分解することです。差の中身は、生まれ持った能力というより、「学習を支える環境」と「前回までの積み残し」という、あとから手を入れられる要因が大きな部分を占めます。
| 在学中 | 既卒 | |
|---|---|---|
| 強制力 | 授業・模試・課題で自動的に勉強する | 自分で作らないとゼロ |
| 情報 | 学校から最新情報が入る | 自分で取りに行く必要がある |
| 仲間 | 同じ目標の友人が周りにいる | 孤独になりやすい |
| 時間 | 勉強が本業 | 仕事と両立することが多い |
要するに:既卒のハンデの多くは、「勝手に勉強が進む環境」が消えていることから来ています。
環境は、能力と違って自分で作り直せます。だからこそ、そこが計画立て直しの出発点になります。
ステップ①:現状を正確に知る(まずここから)
立て直しは、現在地の把握から始まります。ここを飛ばして問題集を解き始めるのが、最もよくある失敗です。
やること:まだ解いていない年度の国家試験を、本番と同じ条件で通しで解く
- 自分が受験した回は使わない(覚えている分、実力より高く出ます)。その1〜2回前など、手つかずの年度を1回分用意する
- 時間を計り、休憩の取り方も本番どおりに通しで解く
- 採点したら、必修と一般に分けて得点率を出す
これで見えるのは次の2点です。
- 必修は8割(40点)に届いているか
- 一般は6割(120点)に届いているか、科目別ではどこが落ちているか

※合格基準は年によって補正されることがあります。過去問での自己採点は「合否判定」ではなく現在地の目安として使ってください。
⚠️ 必修で基準に届いていない場合は、そこが最優先課題です。一般でどれだけ稼いでも、必修が基準未満なら不合格になります。詳しくは必修問題対策へ。
自分の点数を直視するのはつらい作業ですが、ここが最も価値のある1日になります。地図がなければ、どこへ進むかも決められません。
ステップ②:「捨てるもの」を決める(絞る勇気)
既卒受験で最も大切な判断が、これです。
在学中と違い、使える時間は限られています。仕事をしながらなら、なおさらです。にもかかわらず「全科目を最初から完璧に」とやろうとして、範囲の広さに押しつぶされる——これが典型的な失敗パターンです。
ここでいう「捨てる」は、やらないことではありません。「後回しにする」「深追いしない」という意味です。優先順位の低いものは、ゼロにするのではなく時間配分を薄くする——それだけです。
優先順位のつけ方
- 必修(80%ボーダー) … ここが基準未満だと、一般でどれだけ取っていても不合格。最優先
- 配点が大きく、得点が伸びていない科目 … 解剖・生理・柔道整復理論など主力科目
- あと少しで安定する科目 … 6割前後で揺れている科目は、少しの労力で確実な得点源になる
- (後回し)すでに安定している科目・細かい応用や周辺知識 … 深追いせず、確認だけにとどめる

⚠️ 「出題数が少ない科目だから丸ごと捨てる」はしないでください。 必修50問は科目を問わず出題されるため、関係法規のように問題数が少ない科目でも、必修の失点に直結することがあります。後回しにしていいのは「科目」ではなく「細かさのレベル」です。
要するに:「全部やる」を捨てて、「合格点に必要な部分」に絞る。
満点を取る試験ではありません。基準を超えるための最短ルートを選ぶのが、限られた時間での戦い方です。
ステップ③:勉強が「自動で進む」仕組みを作る
在学中にあった強制力を、自分で再現します。意志の力に頼らないのがポイントです。
① 時間を先に確保する
「空いた時間にやる」では続きません。「何時から何時まで」を先にカレンダーに入れる。仕事があるなら、平日は短時間でも毎日、休日にまとめて、という形でも構いません。
② 復習のタイミングを決めておく
一度で覚えられないのは当たり前です。間隔をあけて繰り返す(分散学習)、思い出してから答え合わせをする(想起練習)——この2つは、多くの研究で効果が示されている方法です。詳しくは科学的に効く勉強法にまとめています。
③ 過去問を「解くだけ」で終わらせない
既卒受験で効率がいいのは過去問演習ですが、やり方を間違えると点数が伸びません。周回の仕方は過去問の使い方を参考にしてください。
④ 出願まわりを最初にカレンダーへ入れる
在学中は学校が願書をまとめてくれましたが、既卒は出願も自分で行います。受験願書の受付期間、必要書類(卒業証明書など)、試験日を、勉強計画より先にカレンダーへ入れてください。手続きの遅れは、実力と無関係に受験そのものを失わせます。最新の日程・要件は必ず公式(柔道整復研修試験財団)の発表で確認を。
⑤ 孤独を仕組みで解消する
これは軽視されがちですが重要です。既卒受験の最大の敵は、学力よりも孤独と不安であることが少なくありません。
- 母校の先生に相談する(学校によっては卒業生の相談も受け付けています)
- 模試を受けて、自分の位置を客観的に知る
- 同じ立場の人とゆるくつながる
一人で抱え込まないことは、勉強を続けるための戦略です。
気持ちが続かないときは
再挑戦の道のりでは、うまくいかない時期が必ず来ます。それは意志が弱いからではなく、強制力のない環境で長期間走ることが、そもそも難しいからです。
- 計画どおりに進まない日があっても、計画そのものを捨てない(1日の遅れは、翌週で吸収できます)
- 「今日は30分だけ」でも、ゼロとは大きく違います
- 気持ちの立て直し方そのものについては、国試のモチベ維持と留年不安の乗り越え方にまとめています。在学生向けの記事ですが、不安との付き合い方は既卒でも同じです
- 眠れない、食べられない、何も手につかない状態が2週間以上続くときは、無理に押し切らず相談してください。母校の学生相談窓口や担任の先生のほか、お住まいの自治体の「こころの健康相談」窓口、心療内科・精神科が相談先になります。体調を崩してからでは、勉強どころではなくなります
- 受験は「今年」だけのものではありません。立て直しのために一度ペースを落とす判断も、戦略の一つです
まとめ
- 既卒のハンデの多くはあとから手を入れられる要因(環境・積み残し)。環境は自分で作り直せる
- ステップ①:まだ解いていない年度の国試を本番同様に解き、必修・一般それぞれの現在地を把握する
- ステップ②:捨てるものを決める。必修 → 主力科目 → あと一歩の科目、の順に絞る
- ステップ③:仕組み化(時間を先に確保/分散学習・想起練習/過去問の使い方/孤独を解消)
- うまくいかない日があっても計画は捨てない。つらいときは一人で抱えない
もう一度挑戦すると決めたなら、あとは、やり方を一つずつ見直していけます。まずはステップ①、現在地の把握から始めてみてください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「柔道整復師国家試験の合格発表」(新卒者・既卒者別の受験者数/合格者数)
- 公益財団法人 柔道整復研修試験財団「柔道整復師国家試験」
- ※本文の新卒・既卒別合格率は、上記の公表データにおける近年の実績値の幅を示したものです。年により変動します。詳細な年次データは国試総合ガイドを参照してください。
- 学習方法は一般的な学習研究(分散学習・想起練習)の知見に基づきます。詳細と文献は科学的に効く勉強法に記載
※本記事は柔道整復師国家試験の学習を目的とした一般的な情報提供です。合格基準・出願要件などの最終確認は、必ず公式(柔道整復研修試験財団・厚生労働省)の最新発表をご参照ください。
監修:セジュツノワ編集部(柔道整復師・柔道整復師専科教員)

