「勉強しているのに点数が伸びない」「このまま留年するんじゃないか」——国家試験が近づくにつれ、そんな不安に押しつぶされそうになる柔整学生は少なくありません。
自分自身、学生時代は勉強が苦手で、成績不振から留年寸前まで追い込まれた経験があります。そこから死ぬ気で勉強に取り組み、国家試験に合格しました。その後、院長として現場に立つなかで、勉強が苦手な学生に勉強を教える機会も何度かありました。この記事では、その両方の経験をもとに、モチベーションの保ち方と留年不安との付き合い方を、できるだけ具体的にお伝えします。
この記事で一番伝えたいこと:焦らなくていい。やった分は、あとから効いてきます。
「こいつにできたなら、自分にもできるんじゃないか」——そう思ってもらえたら十分です。
そもそも:なぜ国試のモチベは続かない?留年不安の正体
モチベが下がる原因
点数が伸び悩んで「あきらめ」に入ってしまうこと、プレッシャー、そして卒業後の自分の姿をうまくイメージできていないことなどが挙げられます。
留年不安の正体
「周りに置いていかれる」「親からの説教」「この大変な勉強をもう1年繰り返すのか」というマイナスイメージ——多くは、こうした漠然とした恐怖です。まず正体をはっきりさせることが、対処の第一歩になります。
要するに:留年不安の中身は、「試験に落ちること」そのものより、周りの目・親の顔・もう1年という時間への恐怖であることがほとんどです。つまり不安の大部分は、勉強以外の場所にあります。 だから紙に書き出して分解すると、驚くほど小さくなります。

先輩も“落ちこぼれ”だった:どん底からどう変わったか
1つ上に、成績も良く「絶対受かるだろう」と思っていた先輩がいました。ところがその先輩は数点足りずに不合格。「この人が落ちるなら、今の自分では確実に受からない」——そう痛感し、死ぬ気で勉強を始めたのが転機でした。
当時の自分は1年生のときの成績が悪く、留年か夜間部への異動を迫られていました。留年はしたくなかったので夜間部に異動し、2年目からは夜間部で学ぶことに。周りには仕事を終えてから学びに来る社会人学生が多く、教室はいつもピリピリした空気でした。それでも勉強が苦手な自分はサボりがちで、腑抜けたまま、どんどん落ちていきました。
——ただ、いま留年している人・したことがある人に、誤解してほしくないことがあります。留年は「終わり」ではありません。 当時の自分は「したくない」の一心でした。でも院長として現場に出てから、もう1年かけて土台を作り直し、そこから合格していった学生を何人も見てきました。1年遅れても、資格を取ってしまえば現場では誰も気にしません。遅れた事実より、そこから何を変えるかのほうが、あとの人生にずっと効きます。

三者面談で、父親が恩師に「もうこいつは辞めさせます。実家に連れて帰ります」と伝えたことがあります。そのとき恩師が「まだ間に合う、辞めさせないでほしい」と説得してくれたおかげで、何とか退学を免れました。ここで本当に危機感を覚え、気持ちを入れ替えました。
遊びをやめ、バイトも減らし、朝から学校へ行き、夜間の授業が始まる18時過ぎまで自習。休みの日も、寝る以外はずっと机に向かい、模試の復習などすべての時間を勉強にあてました。過去問・模試・黒本は10年分、丸暗記できるほど繰り返しました。クラスで最下位だった順位は、気づけば上位5人に入るようになっていました。
※ ここで言う「丸暗記できるほど」は、答えの記号を覚えたという意味ではありません。「なぜその選択肢が正解で、他の4つがなぜ違うのか」を、毎回自分の言葉で説明できるまでやった、ということです。記号だけを覚えても、本番で選択肢の並びが変わった瞬間に落とします。
いま振り返って、ひとつだけはっきり言えるのは——削ったのは遊びとバイトの時間で、睡眠ではなかったということです。寝る時間を削って机に向かった日は、翌日まるごと使いものになりませんでした。
一人できついときは、同級生5人で一緒に頑張りました。わからないことはその都度みんなで調べて解決していきました。落ちこぼれ5人が集まると、どうしても気が緩んでサボりたくなる瞬間もありましたが、それでも根性でやり切りました。
5人のうち1人は、途中でペースを落としてしまい、その年は合格に届きませんでした。他の4人は合格しています。ただ、これは「サボったから落ちた」という単純な話ではありません。結果を分けるのは、そのときの体調も、家庭の事情も、当日の問題との相性もあります。大事なのは、落ちた1年が終わりではないということです。翌年に受け直して資格を取り、いまも現場に立っている人を、自分は何人も知っています。
根気強くやれば、必ず受かります。
——これは、自分が最下位から這い上がったときに恩師からかけられ、その後、勉強が苦手な学生に教えるときにも言い続けてきた言葉です。
※ もちろん、努力の量だけで合否が決まるわけではありません。体調・環境・その年の出題によって結果は変わります。それでも、やり方を直して続けた人が伸びる場面を、自分は何度も見てきました。
モチベを保つ具体的な方法・習慣
自分がやっていたのは、次の3つです。
- ノートを閉じて、今日やった範囲を白紙に書き出す。出てこなかったところだけ開いて確認する
- 朝イチで「今日どこやる?」だけ友人と送り合う。声をかけ合うだけで、机に向かうまでが速くなる
- 「どこが分からないか分からない」状態のまま先生のところへ行く。整理してから行く必要はありません
そのうえで、つまずく場面ごとに「自分ならこう乗り越える」を整理してみます。
| よくある“つまずき”の場面 | そのときの心境 | 自分ならこう乗り越える |
|---|---|---|
| 範囲が広すぎて何から手をつけるか分からない | やることが多くて順番がつけられない | 過去問・模試の解説を自分で調べて作成する。そうすると2〜3教科をまとめて学べる |
| 模試の点が伸びず自信を失う | やっても意味がないように感じる | 点数はあとから動き出すことが多い。今は地力をつけるために地道にやっていく |
| 周りと比べて焦る・落ち込む | 自分だけ伸びない | 戦う相手は周りではなく前回の自分。 前回の点数を上回るためにやる |
| 直前期、不安で集中できない・眠れない | 落ちたらどうしよう | ここまで来たら慌てても同じ。凡ミスだけしないように復習を重ねる |
| そもそもやる気が出ない日が続く | めんどくさい | やる気を落とした原因を探して、ひとつずつ解決する |

勉強法そのものを見直したい人は、科学的に効く勉強法 を。
「何から手をつけるか分からない」が続いているなら、まず年間の流れを持つと落ち着きます。3年生の国試対策スケジュール もあわせてどうぞ。
留年・不安との付き合い方
不安やプレッシャーとの付き合い方としては、次の3つを大切にしていました。
- 声に出す
- 何が不安なのか・何が気になるのかを紙に書き出す
- 「不安だ」と素直に認める
どうしてもやる気が出ない・折れそうなときは、ノルマや決めていたことをやらなかった自分を想像してみてください。やらなかった自分より、やった自分のほうが、あとで胸を張れます。 何のためにこの業界を選んだのかを思い出すのも効果的です。
それでもしんどいときは、思い切り遊んでしまってかまいません。ただし「今日1日」と決めてから遊ぶこと。終わりを決めておかないと、罪悪感だけが残ります。
学生がやりがちな“空回り”な頑張り方
がんばっているのに空回りしてしまう例としては、次のようなものがあります。
- 一夜漬け
- 睡眠時間を削っての勉強
- 長時間勉強している自分に安心してしまい、中身のない時間を過ごす
〔重要〕「覚えられた」という勘違いに注意
直前に詰め込んだ直後は、スラスラ思い出せます。ところがこの「スラスラ感」は、長く覚えていられるかどうかとは別ものです。教科書を読み返す勉強は、直後のテストでは高得点が出るのに、1週間後には「思い出す練習」をした人に追い抜かれることが研究で示されています(Roediger & Karpicke, 2006)。
つまり、点数が上がった=定着した、ではありません。 上がった科目こそ、いったん手を止めずに確認を続けてください。
確認のしかたは2つだけ。
- 何も見ずに書き出す——ノートを閉じて、その科目のキーワードを白紙に出す。出てこなければ、そこがまだ覚えていない場所です。
- 日をあける——同じ範囲を、翌日・数日後・1週間後と間隔をあけて触る。詰めてやるより、間をあけたほうが残ります(分散学習)。
やり方の詳細は 科学的に効く勉強法 にまとめています。
それでもきつい時に(頼り方・切り替え)
一人で抱え込まないことが大切です。先生でも、友人でも、恋人でも、誰でも構いません。
もちろん、自分たちセジュツノワのメンバーを頼ってもらってもかまいません。勉強のやり方や進路の悩みは、お問い合わせ から送ってください。読んで、できる範囲でお答えします。(※体調・こころの不調については、下の相談先を優先してください。)
つらさが大きいときは、専門家にも相談を
眠れない、食べられない、何も手につかない——そんな状態が2週間以上続くときは、勉強でどうにかしようとせず、相談してください。学校の担任の先生・学生相談窓口やスクールカウンセラーのほか、お住まいの自治体の「こころの健康相談」窓口、心療内科・精神科が相談先になります。体調を崩してからでは、勉強どころではなくなります。 相談することは、逃げではなく戦略です。
先輩からのひとこと
勉強の結果が出るのは数か月先です。すぐに結果が出ないからといって焦らないこと。今日やった分は、点数に表れるより先に、確実に自分の中に積み上がっています。頑張りましょう。
国家試験の全体像から知りたい方は、柔道整復師国家試験とは?完全ガイド をどうぞ。
すでに一度受験を経験している方に向けては、既卒受験生の勉強計画の立て直しについても別の記事でまとめています。
参考文献・出典
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-Enhanced Learning. Psychological Science, 17(3), 249–255.
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.
- 学習法の詳細と文献は 科学的に効く勉強法 に記載しています。
※本記事は執筆者個人の経験に基づく情報提供であり、特定の成績向上や合格を保証するものではありません。結果には個人差があります。合格基準・試験日程などの最終確認は、必ず公式(公益財団法人 柔道整復研修試験財団・厚生労働省)の最新発表をご参照ください。
監修:セジュツノワ編集部(柔道整復師・柔道整復師専科教員)/執筆:碇先生

