「柔道整復師の就職先は、整骨院か整形外科」——学生のうちは、そう思っている人が多いと思います。
私は柔道整復師として働きながら、理学療法士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士の資格を取ってきました。その多くは、働いた職歴があったから受験できたものです。この記事では、柔整師が介護分野でどんな仕事ができるのか、そこからどんな資格につながっていくのかを、私の経験を交えてお伝えします。
※ この記事は柔道整復師国家試験とは?完全ガイドの進路クラスターの記事です。柔道整復師の就職先の選び方、整形外科で働く柔道整復師とあわせてどうぞ。
この記事で一番伝えたいこと:柔道整復師の資格は、そこで終わりではありません。
働いた職歴が、次の資格の受験資格になることがあります。経験したことを別の分野で活かして活躍する道が、実際にあります。
そもそも:柔道整復師は介護分野で何ができる?
介護分野で柔整師が担うのは、主に機能訓練指導員の仕事です。
柔道整復師の国家資格があれば、それだけで機能訓練指導員になれます。 追加の資格や実務経験は要りません(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・あん摩マッサージ指圧師も同じ枠です。はり師・きゅう師は2018年度の介護報酬改定で加わりましたが、こちらは実務経験の要件があります)。
機能訓練指導員の仕事の中身
| 業務 | 具体的にやること |
|---|---|
| 集団体操 | 立案から実施まで。全体を見ながら進める |
| 個別の機能訓練 | 可動域の改善、筋力訓練、バランス訓練など、利用者ごとにプログラムを立てて実施する |
| 評価・観察 | 事前に得た情報をもとに評価し、動作を観察して問題点を抽出する |
| 問診 | 生活のなかでの困りごとを聞く |
要するに:整骨院が「痛みや外傷」を見るのに対して、介護分野は「生活」を見ます。
疾患を見るというよりも、利用者様の生活・人生に関わる仕事です。急性期ではなく、実際の生活につながる動作や、その方の生きがいにつながる業務が多くなります。
働く場所によって、見るところが変わります

| 働く場所 | アプローチの中心 |
|---|---|
| デイサービス | 生活の中での動作へのアプローチ |
| 訪問 | 個別の訓練に加えて、手すりや歩行器などの自助具の提案——生活環境へのアプローチ |
| 施設 | 在宅復帰に向けたアプローチが中心 |
同じ介護分野でも、デイサービスと訪問では見ているものが違います。訪問はとくに、体だけでなく“家”を見る仕事だと思ってください。
※ 訪問リハビリを担当するのは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。柔道整復師の資格だけでは担当できません。
介護現場のやりがいと、大変なところ
やりがい
利用者様のできることが増えていく——これに尽きます。疾患を治すというよりも、その方の生活そのものに関与する仕事なので、変化が生活の形で返ってきます。
もうひとつは、職歴が次の資格につながっていくことです。ここは記事の後半で詳しく書きます。
大変なところ(正直に)
- 求められる知識が多い。 さまざまな事業所や職種と連携するので、自分の専門分野だけでは足りません
- 勤務地によっては祝日も出勤することがあります
- 給料面は、はじめは低いことが多いです
ただ、給料の話には続きがあります。
資格取得の補助を出してくれる会社もあり、資格を取るとともに給料が上がることもあります。(くわしくは後半の「誤解①」で)
職歴を活かして取れる資格:介護福祉士・ケアマネ・社会福祉士
ここがこの記事の核です。働いた職歴が、次の資格の受験資格になります。 ただし、どの業務の職歴が数えられるかは、資格ごとに違います。

| 資格 | どんな資格か | 受験に必要な実務経験 | あわせて必要なこと |
|---|---|---|---|
| 介護福祉士 | 介護の専門職の国家資格 | 介護等の業務に従業期間3年以上(1,095日以上)かつ従事日数540日以上 | 受験までに実務者研修(介護福祉士を受ける前に必要な研修)を修了 |
| 介護支援専門員(ケアマネジャー) | 介護サービスの司令塔。ケアプラン(介護サービスの段取り)を作る | 柔道整復師などの国家資格に基づく業務に通算5年以上かつ900日以上 | 試験合格後、実務研修を修了して登録 |
| 社会福祉士 | 相談の専門家 | 生活相談員などの相談援助業務に4年以上 | 受験までに一般養成施設(通信制あり・1年以上)を修了 |
要件は変わります。必ず最新を公式で確認してください
上の年数・日数は2026年9月時点で公的情報を確認したものです。制度や要件は改定されることがあります。 実際に動くときは、必ず各試験の公式(社会福祉振興・試験センター、各都道府県のケアマネ試験窓口など)で最新をご確認ください。
- ケアマネの年数として数えられるのは、柔道整復師の免許を取ったあとに働いた期間です。 在学中に整骨院で助手のアルバイトをした期間は含まれません。実務経験は勤務先に証明してもらいます。
- 兼務は、辞令などでその業務が主な仕事だと認められている場合に数えられます。 兼務していれば自動的に数えられるわけではありません。
- 生活相談員になれる資格の要件は、自治体によって違います。
- 介護分野への就職を考えるときは、①介護業務や生活相談員を兼務できるか ②資格取得の補助があるか ③実務経験の証明書を出してもらえるか、を確認しておくと安全です。
介護福祉士とケアマネでは、年数の数え方が違います
ポイントは、介護福祉士の実務経験は「介護等の業務」に対して、ケアマネの実務経験は「柔道整復師としての業務」に対してカウントされる、という違いです。機能訓練指導員をやっているだけでは介護福祉士の年数は貯まらないので、介護業務を兼務し、それが主な業務だと認められている必要があります。
要するに:ケアマネは“柔整師として働いた年数”で受けられます。
柔道整復師の資格そのものが、ケアマネの受験資格につながっているということです。柔道整復師として施術にあたっていれば、5年900日は整骨院での勤務でも積み上がります。
学生が誤解しがちな点
誤解①:「介護=きつい・給料が安い」
給料は、働く事業所の規模や体制で変わります。 介護分野には様々な加算があり、そのぶん給与に幅が出ます。一律に安いわけではありません。加算は、資格を持つ人を配置するなど体制を整えた事業所に、介護報酬が上乗せされる仕組みです。だから資格があると、給料の交渉がしやすくなります。
そして、ヘルパー業務を求められる場面は多くありません。 機能訓練指導員として入る以上、イメージしている「介護の仕事」とは中身が別です。ここは学生さんが一番誤解しているところだと思います。ただ、介護福祉士を目指すなら、介護業務を兼務できる職場かどうかが大事になります。
誤解②:資格は「あとで取ればいい」
働きだして資格取得でキャリアアップを目指すなら、職歴の要件を満たしたら、できるだけ早く取ったほうがいいです。年齢を重ねてから取ると、働く場の選択肢が少なくなります。
順番について、ひとつおすすめがあります。
介護分野で働いていると、制度や加算の知識が必要になります。だから受験資格を満たしたら、ケアマネとして働く予定がなくても、まずケアマネの資格を取るのがおすすめです。介護分野のサービスの流れが分かるので、そのあとの仕事がぐっとやりやすくなります。
そして相談業務に興味を持ったなら、最終的に社会福祉士まで。ここまで取ると、公務員を目指す道も出てきます。
向いている人
- 介護・福祉分野や、子どもの療育分野に興味がある人
- 利用者様の生活や人生に関わる仕事がしたい人
逆に、いろいろな分野で働いてみたい人は、急がなくて大丈夫です。
先輩からのひとこと
ケアマネの資格を取ったあと、同じ法人内のケアプランセンター(ケアマネがケアプランを作る事業所)に欠員が出て、兼務で業務をしていた時期があります。
やってみて分かったのは、ケアマネ業務を経験していると、ケアマネさんとの連携のときに話が通じるということでした。経験を踏まえて話せるので、相手からの信頼度が上がります。名刺に「介護支援専門員」と書いてあるだけでも、相手が「この人は介護分野の知識がある」と思ってくれるので、関係を築きやすくなりました。
ついでに書いておくと、兼務のときに給料アップの交渉をして、実際に上がりました。 資格と役割が増えたぶんは、きちんと言っていいと思います。
【重要】資格は「支え方」を変えるためのものです
柔道整復師を目指す皆さんには、人のために、という思いがあるはずです。ただ、資格を持っていないと、介護分野では介入したくてもできないことが多い。
実際に働いていて、「自分だったら、目の前の方のためにもっといい提案ができるのに」——そう思ってもできない、というもどかしさがありました。
人を支える職業は多種多様です。自分に合っている支え方は、実際に経験してみないと分からない部分があります。資格の取得は、そのときの支え方を変えるためのものだと思っています。
まとめ
- 柔整師が介護分野で担うのは主に機能訓練指導員。柔道整復師の資格だけでなれます
- 見るのは疾患ではなく生活。デイサービス・訪問・施設で、見るところが変わります
- 職歴が次の資格の受験資格になります(介護福祉士・ケアマネ・社会福祉士。数えられる業務は資格ごとに違います)
- ケアマネは「柔整師として働いた年数(免許取得後)」で受けられます
- 要件を満たしたら早めに取る。年齢を重ねてから取ると、働く場の選択肢が少なくなりがちです
- 年数や要件は変わります。動くときは必ず公式で最新を確認してください
就職先の全体像から知りたい方は、柔道整復師の就職先の選び方 もあわせてどうぞ。
監修:セジュツノワ編集部(柔道整復師・柔道整復師専科教員)/執筆:林先生

