「好中球、マクロファージ、T細胞、B細胞…登場人物が多すぎる」
免疫は、細胞の名前と役割がごちゃ混ぜになって挫折しやすい単元です。
でも免疫は、「体を守る二段構えの防衛システム」として見ると、驚くほどすっきりします。先に動く見張り役(自然免疫)と、あとから来る専門部隊(獲得免疫)。この骨格を先に持つと、あとから出てくる細胞名を「どちらの部隊の話か」で仕分けできるようになります。
そもそも:免疫は「2段構え」でできている

病原体に対する生体防御は、大きく2つに分けられます。
| 自然免疫 | 獲得免疫 | |
|---|---|---|
| タイミング | すぐ動く(最初の防衛線) | あとから動く(時間がかかる) |
| 相手の選び方 | 相手を選ばず、広く対応 | 特定の相手に狙いを定める |
| 主役 | 好中球・マクロファージ・NK細胞 など | T細胞・B細胞 |
| 記憶 | しない | する(免疫記憶) |
要するに:自然免疫は「とりあえず駆けつける警備員」、獲得免疫は「相手を特定してから来る専門部隊」。
専門部隊は準備に時間がかかる代わりに、一度戦った相手を覚えているのが決定的な違いです。
自然免疫:まず駆けつけて食べる
自然免疫の中心は、貪食(どんしょく)——病原体を食べて処理することです。
順番があります。
- 好中球が先に感染部位へ集まり、病原体を貪食する。その後、死滅して膿(うみ)になる
- マクロファージが遅れて到着し、病原体だけでなく好中球の死骸や融解した組織も貪食して後片付けをする

💡 「膿の正体は、戦って死んだ好中球」——このイメージを持つと、好中球とマクロファージの順番と役割が同時に覚えられます。マクロファージは後片付け役、と押さえてください。
獲得免疫:液性免疫と細胞性免疫の2種類
獲得免疫は、さらに2つに分かれます。ここが国試の頻出ポイントです。
液性免疫(えきせいめんえき)
抗体を使って病原体を排除する仕組み。抗体は血液(体液)中を流れて働くので「液性」です。
⚠️ 抗体を実際に作るのは「形質細胞」です。 B細胞が抗原の刺激を受けて形質細胞に分化し、その形質細胞が抗体を産生します。「B細胞が抗体を作る」と一段飛ばしで覚えていると、「抗体を産生する細胞はどれか」と問われたときに迷います。B細胞 →(分化)→ 形質細胞 → 抗体、の順で押さえてください。
細胞性免疫
活性化したT細胞——具体的にはキラーT細胞が、ウイルスなどに感染した細胞に直接傷害を与えて排除する仕組み。細胞が自分で手を下すので「細胞性」です。
流れはこうです。感染した細胞は「自分の中に敵がいます」と抗原の断片を細胞表面に掲げる → キラーT細胞がそれを見つけて破壊する。ヘルパーT細胞(司令塔)は、ここでもキラーT細胞を活性化する役として働きます。
要するに:液性=抗体という「飛び道具」で倒す/細胞性=T細胞が直接「殴りに行く」。
名前がそのまま戦い方を表しているので、語呂は不要です。「液体(抗体)が流れて働く」「細胞が自分で行く」と意味で押さえましょう。

ざっくりした流れ
どちらの免疫も、入口は同じです。マクロファージや樹状細胞が抗原を提示し、それを受けたヘルパーT細胞が活性化する——ここまでは共通で、そこから枝分かれします。
| 液性免疫 | 細胞性免疫 | |
|---|---|---|
| 共通の入口 | 抗原が侵入 → マクロファージ・樹状細胞が抗原を提示 → ヘルパーT細胞が活性化 | ←左と同じ |
| 枝分かれ | ヘルパーT細胞がB細胞を活性化 | ヘルパーT細胞がキラーT細胞を活性化 |
| 実行役 | B細胞 →形質細胞が抗体を産生 | キラーT細胞が感染細胞を直接傷害 |
ここで重要なのが、どちらの経路でもヘルパーT細胞が「司令塔」として間に入るという点です。抗体を作るのはB細胞(→形質細胞)、感染細胞を壊すのはキラーT細胞です。
要するに:ヘルパーT細胞は、液性・細胞性の両方に共通する司令塔。「液性=B細胞だけの話」と切り離して覚えると、ここで落とします。
抗体(免疫グロブリン)は5種類
抗体はγグロブリン(免疫グロブリン)に含まれ、IgG・IgA・IgM・IgD・IgEの5種類があります。
まずは5種類を一覧で押さえます。
| 種類 | 押さえるポイント |
|---|---|
| IgG | 5種類の中で最多、そして最小。胎盤を通過できる抗体 |
| IgA | 乳汁(初乳)や唾液・腸液などの分泌液に含まれ、粘膜を守る |
| IgM | 5種類の中で最大の5量体。感染の初期に最初に作られる |
| IgD | B細胞の表面に存在。血液中の量はごくわずか |
| IgE | アレルギーに関わる |
このうち、国試で特に狙われるのはIgGとIgEです。
- IgG:最多・最小・胎盤通過の3つをセットで。胎児のうちに母親のIgGが移行するので、生まれてしばらくの間は新生児を守ります
- IgE:肥満細胞や好塩基球の表面にIgEの受容体があり、そこに結合したIgEへ抗原が結合するとヒスタミンが放出され、蕁麻疹などの即時型(I型)アレルギーが起こります
💡 IgGとIgMは「大きさと血中の量」が逆になっています。IgGは5種類でいちばん小さいのに、血中の量はいちばん多い。IgMは5量体でいちばん大きいのに、血中の量はIgGよりずっと少ない。 この2つはペアで対比すると、一度に整理できます。
※ これはIgGとIgMを見比べるときの目安で、5種類すべてに当てはまる法則ではありません(IgD・IgEは小さいですが、血中の量はごくわずかです)。なお胎盤を通過できるのはIgGだけですが、その理由は大きさではありません。 胎盤の側に、IgGだけを選んで運ぶしくみがあるためです。「小さいから通れる」と機序で覚えてしまうと、IgGと大きさの変わらないIgD・IgEも通れることになってしまうので注意してください。
💡 IgG の「G」= Go(通れる) と結びつけると、胎盤通過性を忘れにくくなります。逆にIgMは胎盤を通過できません。血液型不適合で、Rh式の抗D抗体(IgG型)は胎盤を通って胎児に影響しうるのに対し、ABO式の抗体は主にIgM型で胎盤を通過しにくい——新生児溶血性疾患がRh式でより重症化しやすいのは、この違いが理由です。
🧭 この話は黄疸のしくみと分類の覚え方で扱った新生児溶血性疾患(母子間の血液型不適合)と直結しています。「なぜRh式のほうが重症化するのか」の答えが、この抗体の種類にあります。
免疫記憶:2回目が速いのはなぜか
獲得免疫の最大の特徴が免疫記憶です。
- 一次応答:初めて出会う抗原。抗体が作られるまで時間がかかり、量も少ない
- 二次応答:同じ抗原と再び出会ったとき。メモリー細胞のおかげで迅速かつ多量に抗体が出る
「1回目は遅い・少ない/2回目は速い・多い」——グラフで問われることも多いので、形でイメージしておきましょう。
💡 ワクチンは、この仕組みの応用です。 二次応答を先に用意しておくためのものだと考えてください。弱毒化した病原体(生ワクチン)、殺した病原体やその一部(不活化ワクチン・成分ワクチン)、毒素を無毒化したもの(トキソイド)——こうしたものを人為的に体内へ入れて、わざと一次応答を起こさせておく。こうしてメモリー細胞を作っておけば、本物に出会ったときにはいきなり二次応答から始められる——だから発症を防いだり、軽く済ませたりできるわけです。「なぜ効くのか」を機序で説明できるようにしておきましょう。
国試で狙われるポイント
① 液性免疫と細胞性免疫の取り違え
- 液性=B細胞・抗体
- 細胞性=T細胞(実行役はキラーT細胞)
「細胞性免疫は抗体による」は誤りです。
② 抗体を作るのはB細胞系(形質細胞)——T細胞ではない
ヘルパーT細胞は司令塔であって、抗体そのものは作りません。まずはT細胞との対比で押さえてください。
そのうえで、選択肢にB細胞と形質細胞が同時に並んだら、答えは形質細胞です。実際に抗体を産生・放出しているのは、B細胞が分化したあとの形質細胞だからです。
③ 胎盤を通過するのはIgG
IgMは通過しません。教科書の血液型の項に、ABO式の抗体はIgM型で胎盤を通過せず、Rh式の抗D抗体は胎盤通過性をもつIgG型である、という趣旨の記載があり、ここが根拠です。
④ 好中球とマクロファージの順番
好中球が先、マクロファージが後(後片付け役)。
🧭 つながりで覚える(科目横断)
免疫は、他科目と非常につながりの強い単元です。
- 免疫 → 血液:抗体はγグロブリン=血漿タンパクの一種。血液凝固などと同じ「血液」の章で扱われます
- 免疫 → 一般臨床医学:アレルギー、自己免疫疾患、感染症の理解の土台になります
- 免疫 → 新生児の病態:IgGの胎盤通過性が、血液型不適合の理解につながります
「誰が・何を使って・どう戦うか」の3点で整理すると、他科目に出てきたときも迷いません。
まとめ
- 免疫は2段構え:自然免疫=すぐ動く見張り/獲得免疫=あとから来る専門部隊(記憶する)
- 自然免疫は貪食が中心。好中球が先(死ぬと膿)→ マクロファージが後片付け
- 獲得免疫は2種類:液性=B細胞(形質細胞)の抗体/細胞性=キラーT細胞が感染細胞を直接攻撃
- 抗体は5種類(IgG・IgA・IgM・IgD・IgE)。IgGは胎盤を通過/IgEはアレルギー
- 二次応答は速く・多い(免疫記憶)
- 引っかけは液性/細胞性の取り違え・抗体を作るのはB細胞・胎盤通過はIgG
免疫は登場人物こそ多いものの、「二段構え」という骨組みを先に持つと、覚えた細胞名を置く場所ができます。名前と役割そのものは覚える必要がありますが、ばらばらの暗記から「どこに属する誰か」の整理に変わります。まずは全体像から入りましょう。
参考文献・出典
- 柔道整復師養成課程で用いる生理学・一般臨床医学の教科書(自然免疫・獲得免疫、好中球とマクロファージの順序、液性免疫・細胞性免疫、抗原提示とヘルパーT細胞、形質細胞による抗体産生、IgGの胎盤通過性とIgMの非通過、IgE受容体をもつ細胞、免疫記憶を照合)
- 免疫グロブリン5種類の一覧表のうち、IgGの分子サイズ、IgMの5量体、IgAの分泌液中の分布、IgDのB細胞表面への存在は、上記教科書に記載がないため、標準的な免疫学の知見にもとづいて記載しています
※本記事は柔道整復師国家試験の学習を目的とした一般的な情報提供です。生理学的事実の最終確認は、在籍校で使用する教科書を最優先にしてください。
監修:セジュツノワ編集部(柔道整復師・柔道整復師専科教員)

