「第Ⅻ因子、第Ⅹ因子、第Ⅶ因子…番号が多すぎて何がなんだか」
血液凝固は、丸暗記しようとすると混乱しやすい単元の代表格です。
でも安心してください。凝固は1本のストーリーです。「血が止まるまでに何が順番に起きるか」という流れさえつかめば、番号は後からついてきます。この記事では、国試で問われるポイントを流れで整理します。
この記事は国試の完全ガイド(※ピラー記事)の科目別シリーズです。生理学の勉強法で紹介した「流れ(機序)で理解する」が、そのまま活きる単元です。
そもそも:血が止まるまでの流れ
教科書では、止血は ①損傷部の局所的な血管収縮 → ②血小板の凝集 → ③血液凝固 という一連の反応として説明されます。まず血管そのものが縮んで血流を減らし、そのうえで「フタ」と「補強」が続く、という順番です。
⚠️ ここは「止血の第1段階はどれか」という形で問われます。 血管収縮が最初、と押さえてください。
そのうえで、②と③でできる血の塊が、それぞれ一次血栓・二次血栓です。番号で混乱するのは、たいていこの2つを分けずに覚えようとするからです。
| できる場面 | 呼び方 | 主役 | 中身 |
|---|---|---|---|
| ②血小板の凝集 | 一次血栓 | 血小板 | 血小板が傷口に集まって、とりあえず塞ぐ |
| ③血液凝固 | 二次血栓 | フィブリン | フィブリンの網が血球を閉じ込め、しっかり固める |
- 一次血栓=血小板血栓
- 二次血栓=フィブリン血栓
要するに:一次は「血小板でフタをする応急処置」、二次は「フィブリンの網で本格的に固める補強工事」。
名前がそのまま中身を表しているので、ここに語呂は要りません。用語の意味で覚えるのが最短です。
一次血栓だけでは、大きな血管の損傷は止血できません。だから二次血栓(=血液凝固)が必要になります。以下は、この③血液凝固の話です。
内因系と外因系 ― 名前の意味から入る
血液凝固には、内因系と外因系という2つの入口があります。名前の由来から入ると、2つを取り違えにくくなります。
内因系=血液の「内」だけで完結する
血液中の凝固因子だけで進行します。傷口に露出したコラーゲン線維に第Ⅻ因子が接触して活性化するのがスタートです。そこからは Ⅻ → Ⅺ → Ⅸ とドミノ倒しに活性化が進み、最終的に第Ⅷ因子複合体ができます。ここで注目してほしいのは、番号が下がっていくことです。12 → 11 → 9 → 8。そしてこの並びに10(第Ⅹ因子)が入っていません。 Ⅹは内因系だけの因子ではなく、次の節で扱う「外因系との合流点」だからです。
まず押さえるのは、入口=第Ⅻ因子/内因系の出口=第Ⅷ因子複合体の2つ。途中のⅪ・Ⅸは「12から下がっていく並び」として一度たどっておけば、単独で問われても手が出ます。
外因系=血管の「外」の組織が関わる
血管の損傷が大きく、血液と組織液が触れ合うときの経路です。組織液中の第Ⅲ因子(組織トロンボプラスチン)と、血漿中の第Ⅶ因子が接触して始まります。
要するに:「内」=血の中だけで固まる/「外」=組織に触れて固まる。
名前がそのまま経路の性質を表しています。これも語呂は不要です。
2つの経路は「第Ⅹ因子」で合流する
ここが最重要ポイントです。内因系と外因系は、別々に走り続けるわけではありません。
内因系:第Ⅻ →(Ⅺ・Ⅸ)→ 第Ⅷ因子複合体 / 外因系:第Ⅲ + 第Ⅶ → 第Ⅶ因子複合体
↓ どちらも第Ⅹ因子を活性化する
第Ⅹa因子
↓ 第Ⅴ因子などと複合体をつくり、プロトロンビン(第Ⅱ因子)に作用
トロンビン
↓
フィブリノゲン(第Ⅰ因子)→ フィブリン(不安定)
↓ 第ⅩⅢa因子が作用
フィブリン(安定・網目状) = 二次血栓の完成

入口は2つ、その先は1本。この「Y字型」のイメージを持てば、途中の番号を忘れても、どこの話をしているのか見失いません。
ビタミンK依存性凝固因子は「肉納豆」
凝固因子のうち、ビタミンKがないと作れないものが4つあります。ここは国試の頻出ポイントであり、語呂が有効な数少ない場面です。
肉納豆(にくなっとう)= Ⅱ・Ⅸ・Ⅶ・Ⅹ
- に → 二 → Ⅱ(プロトロンビン)
- く → 九 → Ⅸ
- なっ → 七(なな) → Ⅶ
- とう → 十(とお) → Ⅹ
数字を日本語読みしているだけ(なな→なっ、とお→とう)なので、暗号を解くような変換が要りません。そのうえ、納豆はビタミンKを多く含む食品——「ビタミンK=納豆」という既に知っている連想が、そのまま語呂の入口になっています。意味とイメージが結びつくので、定着しやすい語呂です。
※ 並び順に意味はありません。教科書や選択肢では Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ と小さい順に並ぶことが多いですが、4つがそろっていれば同じです。肉納豆は「4つを取りこぼさないための道具」と考えてください。
💡 補足:ビタミンKの「K」は、ドイツ語で血液凝固を意味する Koagulation に由来します。名前の由来を知っておくと、「ビタミンKは凝固に関わる」という関係そのものを忘れにくくなります。
国試で狙われるポイント
① 一次血栓と二次血栓の取り違え
「一次血栓はフィブリンによる」は誤り。一次=血小板/二次=フィブリンです。
② 内因系・外因系の開始因子
- 内因系のスタート=第Ⅻ因子(コラーゲンに接触)
- 外因系のスタート=第Ⅲ因子(組織トロンボプラスチン)と第Ⅶ因子
「内因系のスタートは第Ⅲ因子」のように、内と外を入れ替えた選択肢が定番です。
③ 合流点を問う問題
「両系が共通して活性化するのは?」→ 第Ⅹ因子。問い方のパターンが決まっているので、「共通」「合流」という言葉を見たら第Ⅹ因子と即答できるようにしておきましょう。
④ 第Ⅵ因子は欠番/第Ⅳ因子はカルシウムイオン
凝固因子の番号は第Ⅰ〜第ⅩⅢまでありますが、第Ⅵ因子は欠番です。また第Ⅳ因子=カルシウムイオン(Ca²⁺)。番号のついた因子のなかで、ただひとつイオン(=タンパク質ではない)です。教科書の凝固系の図を見ると、第Ⅳ因子は内因系・外因系・第Ⅹ因子の活性化と、複数の段階に繰り返し登場します。 選択肢の中で第Ⅵ因子が何か働くように書かれていたら、その時点で誤りです。また「すべての凝固因子はタンパク質である」も誤りになります(第Ⅳ因子=Ca²⁺)。
⑤ トロンビンの出どころ
「フィブリノゲンをフィブリンに変えるのは?」→ トロンビン。「そのトロンビンは、もとは何か?」→ プロトロンビン(第Ⅱ因子)。この2段は続けて問われます。
トロンビンは突然現れるのではなく、プロトロンビンが第Ⅹa因子から続く反応で変換されたものです。肉納豆の「に(Ⅱ)」は、実はこの流れの中心にいます。
🧭 つながりで覚える(科目横断)
- 生理 → 一般臨床医学:凝固因子は主に肝臓で作られます。だから肝機能が低下すると出血傾向が起こる——黄疸で扱う肝臓の働きと直結しています。
- ビタミンK → 栄養・臨床:ビタミンK欠乏でも凝固因子が作れず、出血傾向につながります。
「肝臓」というキーワードで、生理学・一般臨床医学・栄養がつながります。
まとめ
- 止血は①血管収縮 →②血小板凝集 →③血液凝固の3過程。②でできるのが一次血栓=血小板、③でできるのが二次血栓=フィブリン(用語がそのまま中身)
- 内因系=血の中だけ/外因系=組織に触れて。名前の意味から覚える
- 2つの経路は第Ⅹ因子で合流し、トロンビン → フィブリンへ(Y字型のイメージ)
- ビタミンK依存性因子は「肉納豆」=Ⅱ・Ⅸ・Ⅶ・Ⅹ
- 引っかけは一次/二次の取り違え・開始因子・合流点・第Ⅵ因子の欠番
凝固は、番号を先に覚えようとすると挫折します。まず流れを1本描いてから、番号を乗せる。この順番が最短ルートです。
参考文献・出典
- 柔道整復師養成課程で用いる生理学の教科書(血液凝固系の概要、内因系・外因系、凝固因子表を照合)
※本記事は柔道整復師国家試験の学習を目的とした一般的な情報提供です。生理学的事実の最終確認は、在籍校で使用する教科書を最優先にしてください。
監修:セジュツノワ編集部(柔道整復師・柔道整復師専科教員)

